Katayakiyakisoba

May 25

欧州は目の前の危機悪化をまず止めよ 日本経済新聞社説 2012/05/25

 欧州の経済金融情勢が再び緊迫化している。欧州連合(EU)は23日開いた非公式首脳会議で、ギリシャに財政再建策の実行とユーロ圏残留を求めたが、金融市場ではむしろギリシャのユーロ離脱を懸念する声が高まっている。欧州のリーダーは意見の違いを乗り越え、まず目の前の危機悪化を食い止める策を打ち出すべきだ。

 非公式首脳会議は、財政緊縮一辺倒ともいえる姿勢を改め、公共投資拡充などの成長戦略を6月にまとめることで一致した。焦点のユーロ共同債については推進派のフランスと慎重派のドイツとの溝が埋まらず、結論を先送りした。

 ギリシャに関しては、財政緊縮という支援の前提条件は見直さないことで一致。6月に再選挙を控えるギリシャに対し、「ユーロ離脱は望まないが、そのためには緊縮策という約束をしっかりと守る必要がある」(メルケル独首相)とのメッセージを発した形だ。

 金融市場でギリシャのユーロ圏離脱懸念が高まっているのは、首脳会議で効果的な危機対策が打ち出されなかったうえ、「欧州各国の政策当局者がギリシャのユーロ離脱時の危機対応計画を検討する」と伝えられたためだ。

 ユーロ安や株安が進んだほか、スペインなど南欧の国債が売られるなど、リスクを回避する動きが加速している。状況を放置すると、欧州金融市場が機能不全に陥る恐れもある。

 当面の危機回避には欧州中央銀行(ECB)が積極的な資金供給策を取らざるをえないだろう。昨年末は銀行に長期資金を供給して市場の不安を取り除いた。ギリシャの離脱懸念が強まっている点では状況はより深刻といえ、今回も不安を抑える役割が求められる。

 ただ、ECBの対応は時間稼ぎにしかならない。金融不安の解消には南欧の銀行を中心に大胆な資本増強が不可欠。そのために欧州金融安定基金(EFSF)の資金などが使えるようにすべきだ。危機に陥った国への資金支援枠の拡大も再度検討すべきではないか。

 ギリシャに対して再選挙を前に甘い姿勢を打ち出せないのは理解できる。新政権ができた後は財政規律維持を前提に支援を拡大することなども検討対象になる。

 ユーロ圏の不安定化は日本経済に大きな打撃になる。政府は、世界への危機波及を防ぐため、欧州各国が結束して事態を収拾するよう働きかけを強めるべきだ。

(Source: nikkei.com)

五輪招致への機運高めよう  日本経済新聞社説 2012/05/25

 カナダで国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が開かれ、2020年夏季五輪の候補地のひとつに東京が選ばれた。五輪の開催は日本の活力を高めるきっかけになる。開催地は来年9月のIOC総会で決まる。招致に向けた国内の機運を高めたい。

 東京の計画の特徴は中央区晴海に整備する選手村を中心に、都心周辺に大半の競技施設を配置し、選手の移動に配慮した点だ。東日本大震災の被災地復興としてサッカーの予選は宮城県でも開く。

 今回の選考は開催計画に対する書類審査で、東京は幅広い項目で高い評価を受けた。しかし、駒を一歩前に進めたにすぎない。16年大会の時にも1次選考で高評価だったが、最終選考で敗れている。

 前回に比べれば、国内の招致体制は改善されている。政府は昨年、スポーツ基本法を制定し、国際大会の招致を国が支援する体制を整えた。五輪招致の国会決議も昨年末に終えている。

 五輪は都市が主役といっても、実際には国家間の激しい招致レースになる。都や日本オリンピック委員会(JOC)を中心に、政府や経済界なども一体となったIOC委員への働きかけが必要だ。

 今後、課題となるのは五輪開催に対する国内の支持率の向上だろう。前回の選考でも他都市と比べて国民の支持が低かった点が敗因のひとつになった。原子力発電所の事故や電力供給に対する海外の不安を払拭することも大事だ。

 今回の招致理念は「スポーツの力」を通じた「ニッポン復活」。1964年に開かれた東京五輪が戦災から復興した日本の姿を世界に示したように、20年の五輪も大震災から立ち直った新しい日本を訴える好機になる。

 都はすでに五輪に備えて4000億円の基金を設けているし、民間の力を生かせば開催経費も抑えられる。海外からたくさんの人々が日本を訪れ、経済効果も大きいだろう。こうした点も含めて、国民に開催の意義を丁寧に説明することが重要だ。

(Source: nikkei.com)

食糧権益増やし「攻めの農業」に転換を  日本経済新聞社説 2012/05/24

 大手商社が海外の有力産地で食糧事業を強化している。企業が天然ガスなどの資源分野に続き、食糧分野でも権益を増やせば、干ばつなどで供給不安が強まった場合に安定した調達が期待できる。

 三菱商事や三井物産、豊田通商などはブラジルやアルゼンチンで穀物の集荷事業を強化する。大手商社による南米での調達量は2015年に倍増する見通しだ。

 丸紅は米国の穀物メジャーであるガビロンを買収する交渉も進めている。実現すれば同社の穀物取扱量は年4千万トンと世界首位の米カーギルに並ぶ。

 食糧の調達能力を高める最大の狙いは、需要が増え続ける中国などの新興国へ販売を増やすことにある。同時に、米国やブラジルなど穀物の主要産地で日本企業が優先して調達できる権利は、食糧の安全保障につながる。

 日本の自給率は10年度で小麦が9%、大豆が6%にすぎない。畜産飼料を中心に年間1600万トンを消費するトウモロコシは全量を輸入に頼る。コメ以外の穀物をすべて国内生産でまかなうのは不可能に近い。

 日本人が現在の食生活を維持するためには、パンやめん類の原料になる小麦、食用油の原料になる大豆や菜種、食肉や乳製品の生産を支える飼料穀物を安定して調達していく対策が欠かせない。

 政府は農業政策にあたり、熱量(カロリー)を基準にした自給率を重視してきた。熱量で計算した10年度の自給率は39%で、これを20年度に50%に引き上げる目標を掲げる。しかし、熱量自給率にとらわれるほど従来のコメ中心の考え方が働き、消費の変化に合わせた農業生産から離れてしまう。

 企業が複数の有力産地で小麦などの穀物を安定調達できる経路を持てば、将来の食糧不安は和らぐ。その分だけ、国内農業は熱量自給率を高める「守り」の姿勢から、競争力を強める「攻め」に重点を移せる。

 コメに比べ熱量は低いものの、野菜や果物の付加価値は高い。通常栽培に比べ収量は落ちやすいが、農薬を減らした農産物には食の安全・安心を重視する消費者が高い値段を払う。

 和牛をはじめ、日本の農業技術が生んだ付加価値の高い商品は輸出の拡大余地も大きい。穀物の自給率は低くても、農業を競争力のある輸出産業に育てたオランダの戦略などを参考にしたい。

(Source: nikkei.com)

大津波は想定外だったのか 日本経済新聞社説 2012/05/24

 東京電力・福島第1原子力発電所を襲った津波は本当に「想定外」だったのか。国会と政府の事故調査委員会は、東電や原子力安全・保安院が想定を見直す機会がありながら、それを逸した経緯を明らかにし、産学官がもたれ合ってきた原子力行政の構造的な問題にメスを入れるべきだ。

 東日本大震災の直前、文部科学省の地震調査研究推進本部は地震発生確率を予測する「長期評価」の改訂作業中だった。約1100年前の貞観地震に関する新たな発見を踏まえ、福島沖で大津波をもたらす地震が起きうることを予測に盛り込もうとした。

 改訂が公表されると、原発の津波対策を高める必要が生じる。東電は昨年3月3日、改訂案の「表現を工夫してほしい」と文科省に要請した。ここまでは政府事故調が中間報告で示した事実だが、最近新たな証言が付け加わった。

 長期評価に携わった島崎邦彦・東京大学名誉教授が「改訂案は実際に書き改められた」と学会の講演で明かした。長期評価は震災を踏まえ最終的に昨年11月に公表されたが、島崎氏の指摘が事実なら3.11直前の書き直し版がある。それを公開し経緯を明らかにすべきだ。事実なら東電が政府の地震予測を左右した証拠になりうる。

 似たことが2002年にもあった。東北地方の沖合のどこでも大津波が起きうるとした当時の長期評価に対し、そのときは政府の中央防災会議が異論を唱えて結論を変えた。それも原発への配慮からだったのか、明確ではない。仮にそうならゆゆしきことだ。大津波が早くから想定されていれば、原発だけでなく、多数の住民の命も救えていたかもしれない。

 原発の存在が科学の予測をゆがめてこなかったのか。ここでしっかり検証する必要がある。

 保安院が原子力安全委員会に対し、古い耐震指針でも防災上「支障がない」との見解を出すよう要求していた事実も最近、明らかになった。これも科学的判断をゆがめかねない所業だろう。

(Source: nikkei.com)

「働ける人」の自立促す生活保護改革を 日本経済新聞社説 2012/05/23

 生活保護を受けている人は今や全国で210万人に迫り、過去最多を更新し続けている。2012年度の給付総額は3兆7千億円を超える見通しだ。

 最大の要因とされるのが、リーマン・ショックを契機に「働けるのに生活保護に頼る働き盛りの人たち」が増えたことだ。この人たちが自立できるように生活保護制度を設計し直すことが急務だ。

 厚生労働省も改革案を示し、社会保障審議会は制度見直しの議論を特別部会で始めた。

 柱のひとつは「就労収入積立制度」の創設だ。生活保護の受給者が働いて得た収入の一部を積み立て、保護から抜ける際、本人が受け取る仕組みだ。

 今は受給者が働いて得た収入分の大半は保護給付額から減らされる。保護から抜けた途端、社会保険料や病院での窓口負担ものしかかる。働く意欲をなくす要因を取り除こうという考え方自体は分かるが、基本的な制度設計で見直さなければならない点がある。

 まず、いったん審査を通って受給が始まれば給付が半永久的に続くのを改めるべきだ。受給期間に期限を設け、保護が本当に必要な状態か否かをケースワーカーらが厳格に審査し直す必要がある。

 受給の条件として、働ける人には就職や生活管理などを指南する「自立支援プログラム」への参加を義務付けるべきではないか。

 自立に踏み出しても、実際には不安定な立場の非正規労働者で働き始める受給者が多い。自立への過程での経済支援策も不可欠だ。

 給付総額のほぼ半分を占める「医療扶助」への切り込みも足りない。受給者は病院での窓口負担がなく、過剰な投薬などにつながっているとの指摘があるが、厚労省の案では、肝心の受給者の自己負担の適用に触れていない。

 受給者が一部でも窓口負担するようになれば病院側の意識も変わり、必要以上の投薬などにも歯止めがかかる。負担した後で本人に還付する仕組みを含め、議論する時期にきている。

 厚労省は7年計画の「生活支援戦略」をまとめる方針という。しかし財政負担は年々重くなっており、待ったなしの状況だ。

 働けるのに受給に頼る層が増えるとともに、不正受給も相次ぎ発覚している。高齢者や母子世帯、病気や障害などで本当に生活に困っている人のための制度になるよう、一刻も早く改革すべきだ。

(Source: nikkei.com)

アフガン安定へ日本も動け  日本経済新聞社説 2012/05/23

 これで混迷が続くアフガニスタン情勢の安定につながるのだろうか。北大西洋条約機構(NATO)が首脳会議で、2014年の戦闘終結を宣言した。

 アフガニスタンには現在、米軍を中心に約13万人の国際治安支援部隊(ISAF)が駐留する。NATOは今回、ISAFの活動を14年末までに終了し、15年以降は戦闘任務を主導するアフガニスタンの治安部隊の育成に重点を置くことを決めた。

 米同時テロ事件をきっかけに始まったアフガニスタンでのテロ掃討作戦は10年を超えた。米欧では早期撤退論が高まり、フランスのオランド大統領は仏軍部隊の年内撤収を表明している。

 アフガニスタンでも誤爆や米兵による不祥事などから、国際部隊の撤収や治安権限の早期移譲を求める声が強まっている。双方の利害を考えれば、NATOの撤収計画はやむを得ないのだろう。

 だが、アフガニスタンの治安はほとんど改善されていない。反政府武装勢力タリバンによるテロや攻撃も相次ぎ、先月には首都カブールの日本大使館にもロケット弾が着弾した。アフガニスタンがなお、国際テロと麻薬の温床であることも忘れてはならない。

 米国のオバマ大統領が「リスクはある」と認めたように、アフガニスタンの自立と治安回復への課題は山積している。

 NATO側はまずはテロ組織の掃討作戦を徹底するとともに、穏健派のタリバン勢力との和平対話を進めるべきだ。誤爆事件をきっかけにISAFへの物資輸送を拒否しているパキスタンとの関係修復も欠かせない。将来の治安を担うアフガニスタンの治安部隊や警察の育成も急務だろう。

 同時に、民生支援も積極的に進めていく必要がある。元タリバン兵士の職業支援や農業開発などは、アフガニスタンの自立を促すためのカギとなるからだ。日本政府は7月に東京でアフガニスタンの開発支援の国際会議を開く。日本が貢献すべき分野である。

家庭向け自由化を電力市場改革の一歩に 日本経済新聞社説 2012/05/22

 電力市場の改革を議論している経済産業省の専門委員会が、電力販売を家庭向けも含めて全面的に自由化する方針で一致した。経産省は電気事業法の改正に着手し、2014年度にも実施する。

 東日本大震災と原子力発電所の事故で電力供給の脆弱さが露呈した。いまは家庭に売電できるのは既存の電力会社に限られ、東京電力の料金値上げをめぐっては電力会社を選べない問題も浮かび上がった。消費者の選択肢を増やし、電気を安心して使えるようにするうえで全面自由化は当然だ。専門委の結論を歓迎したい。

 専門委は、10の電力会社が地域ごとに販売を独占しているいまの体制も、料金の高止まりやサービスの画一化を招いたとして見直しを求めた。地域独占が60年以上続いてきたことを考えれば、画期的な提言といえる。

 電力自由化は00年以降、段階的に進んできた。大規模な工場やビル向けはすでに自由化されているが、新規参入が少なく競争原理が働かず、日本の電気料金が国際的に割高な原因になってきた。

 完全自由化で期待される効果は大きい。新規の電力会社が既存の電力会社と競うことで料金の上昇が抑えられる。企業や家庭の省エネ診断といったサービス競争も期待できる。太陽光や風力などの発電会社が増え、自然エネルギーの利用が広がる可能性もある。

 半面、規制改革を競争的な市場づくりにつなげるには、新規参入をどう促すかや、過疎地や離島への安定供給をどうするかといった課題が山積する。専門委はこれらの具体策も十分に議論し、電力改革の全体像として示すべきだ。

 経産省は全面自由化と併せ、燃料費などに一定の利益を上乗せして電気料金を決める「総括原価方式」も見直すとした。新たな料金制度は、新規企業と既存の電力会社が対等の条件で競えることを念頭に設計してほしい。

 発電会社が送配電網を安く借りて、企業や家庭に安定して送る仕組みづくりも要る。既存の電力会社が送配電網を貸す「託送」料金の引き下げに加え、中立的な機関が監視や運用に当たるといった改革案も議論を急ぐべきだ。

 電力市場のあり方は産業競争力を左右し、国民の暮らしにも影響する。短期、中長期の課題を整理し、混乱を避けながら着実に進めなければならない。販売の全面自由化をその一歩にしたい。

スカイツリーで観光に厚みを  日本経済新聞社説 2012/05/22

 東京・墨田区にきょう東京スカイツリーが開業する。テレビ放送などを送信する電波塔であるとともに、眺望や買い物を楽しむ観光・商業施設の役割も担う。立地を生かし、東京や日本の魅力を広く発信する場として生かしたい。

 スカイツリーと関連施設で年間3200万人の来客が見込まれている。きのうはまだ開業前にもかかわらず、外観を見物する客で一帯はにぎわった。周辺には新しい飲食店も増え、塔が間近に見える点を売り物にする既存の観光地や高層住宅も多い。観光施設として関係者や消費者の期待は大きい。

 ただし新名所の効果を、単に地元の観光収入増にとどめるのは惜しい。ツリーが誕生するのは東京の都心から見れば東側の、いわゆる下町と呼ばれる地域だ。

 伝統文化が根付き、工芸などの技術を持つ職人も多く住む。質の高いものづくりの潜在力は高い。こうした環境やコミュニティーのつながり、繁華街の多い都心西部に比べて低廉な家賃などに引かれ、若い創作家が工房や店などの活動拠点を都内の西から東へ移す動きもここ数年目立っている。

 現代文化と伝統文化は都市の活気や観光の両輪となる。ツリーの開業で、浅草や両国、向島など周辺の街を含め下町地域の魅力を国内外に発信できる機会がぐっと増える。ツリーそれ自体のデザインや建設技術も大きな魅力になる。

 日本が漫画、デザイン、アクセサリーなどポップカルチャーやファッションの発信に強いのは、江戸以来の文化が背景にあるとの指摘もある。東京の西と東、現代と伝統をうまく結ぶことで、日本の持つ文化的な厚みを海外に理解してもらう好機につなげたい。

 事業主体の東武鉄道などは、ここを起点に日光や鬼怒川などの北関東、さらには東北へと周遊する旅行商品に力を入れ始めた。東日本大震災後、観光収入の減少に悩む地域だ。東京と京都を結ぶこれまでの外国人観光客のゴールデンルートに加え、第2の太い流れをつくることにも挑んでほしい。

欧州危機と北朝鮮への行動が問われる  日本経済新聞社説 2012/05/21

 欧州債務危機の克服や北朝鮮の挑発行動阻止に一応の結束は確認したが、その決意を確かな行動で示せるのか。主要8カ国(G8)の首脳会議(サミット)が不安を残したまま閉幕した。

 特に注目を集めたのは欧州危機への対応だ。G8の首脳宣言は、経済成長と財政再建の両立が事態の打開に必要と訴えた。6月の再選挙を控えるギリシャには、ユーロ圏にとどまるよう求めた。

 信用不安に悩むギリシャに緊縮財政を迫るだけでは、深刻な景気後退から抜け出せない。一方で財政悪化を放置すれば、債務不履行の危険が高まる。G8が財政再建の努力だけでなく、成長への配慮も求めるのは当然である。

 ただ具体策を示さない限り、市場の動揺は収まらない。欧州連合(EU)は23日の首脳会議で、柔軟な対応を協議すべきだ。財政規律を重んじるメルケル独首相と、成長を重視するオランド仏大統領の歩み寄りが欠かせない。

 欧州危機の悪化に備えておく必要もある。万一の場合も想定し、金融機関の資本増強を急いだ方がいい。EUと国際通貨基金(IMF)の支援枠が十分かどうかも、再検証してもらいたい。

 成長と財政再建の両立は欧州だけの課題ではない。日本は消費増税関連法案の成立に全力を挙げるとともに、今夏に発表する「日本再生戦略」の肉付けを急ぐべきだ。11月の大統領選をにらんだ駆け引きが激しい米国も、必要な経済政策を滞らせるようでは困る。

 日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)は6月の首脳会議で、成長と雇用拡大の行動計画をまとめる。G8が世界経済の安定に指導力を発揮し、新興国に応分の貢献を促すのでなければ、存在意義が薄れる一方である。

 政治分野では、北朝鮮が核実験や弾道ミサイルの発射といった挑発行動に走らぬよう求める立場を確認した。北朝鮮への圧力に慎重なロシアも含め、結束を示せたのは一定の成果だ。だが中国の協力なしに、北朝鮮の暴走を抑えるのは難しい。G8が中国にも働きかけ、協力を促す必要がある。

 市民への弾圧が続くシリアとイランの核問題にも多くの討議時間が割かれた。原油の調達を中東に頼る日本も傍観者ではいられない。しかし、これらの問題に関心が奪われ、北朝鮮問題への対応が後手に回ることがないよう、米欧と緊密な連携をとってほしい。

(Source: nikkei.com)

邦銀が収益源を広げる好機  日本経済新聞社説 2012/05/21

 三菱UFJ、三井住友、みずほの3社に、りそなと三井住友トラストを加えた五大銀行グループの2012年3月期決算は、合計最終利益が2兆4000億円と前の期に比べ36%増えた。5年ぶりの高い利益水準だ。

 リーマン・ショックの後遺症やギリシャ危機に苦しむ米欧銀は、世界的に業務を縮小してきた。対照的に邦銀は海外融資を伸ばすなど、積極的な姿勢も目立ち始めた。今後は収益力を高めるため、個人の資産運用や企業の国際化などを支援するサービスを充実させることが課題となる。

 前期決算の中身を見ると、邦銀の経営は決して安泰ではない。国内の貸し出しは伸び悩み、預金で集めたお金を国債などの有価証券に回す傾向が強まっている。たとえば前期に1兆円近い最終利益をあげた三菱UFJは、有価証券の残高が78兆円と、84兆円の貸出金に迫るほどに増えた。

 国債は金利が下がれば価格が上がるため、売買益をあげられるが、金利が上昇すると損失が出かねない。収益源の多様化が急がれる。

 個人に預金だけでなく投資信託や保険を提供したり、運用・相続の相談に乗ったりするといったサービスを厚くする必要がある。

 企業向けでは、体力の弱った欧州銀に取って代われる業務が多い。輸出入の決済や信用補完といった貿易金融や大型プロジェクト向け融資の分野で、欧州銀の退潮が目立つ。これは邦銀が収益源を広げるための好機となる。

 すでに邦銀はバブル崩壊で抱えた不良債権の処理を終え、ここ数年に限れば証券化商品や南欧国債の損失で打撃を受けた米欧銀に比べ、資産の傷みは少ない。今のところ新しい自己資本比率規制を達成するために、改めて増資をしなくても済みそうだ。

 成長が見込まれる分野にお金を回す機能を磨き、個人や企業の役に立つ。収益力を高め、市場が混乱しても安定的に利益をあげる。邦銀にとって今は、そうした戦略を練り実行する大事な時だ。

(Source: nikkei.com)